「きょうだいの結婚」といってもいろいろな立場がありますが、私は妹として「兄の結婚」にぶち当たりました。
妹や弟が先に結婚するよりかはよくあることでしょうし、当たり前に起こることかもしれません。
でも大学時代に兄が結婚するという話をきいたとき、なんだかそこには喜びよりも、もやもやとした感情が湧き上がってきたのです。
喜ばしいはずなのに、心の奥底は複雑に混みいってなんとも言えない気持ち。
そんな時におすすめの本は、村上春樹の『パン屋再襲撃』に収録されている『ファミリー・アフェア』。
仲の良かった兄と妹。そんな二人の関係性が「妹の結婚」という”アフェア”(問題)によって微妙に変化し、そして和解するのかしないのか。そんな機微を描いています。
きっと今のあなたにぴったり寄り添ってくれるはず。

もやもや「とにかくイケすかないんじゃぁ!」
きょうだいの婚約者・結婚相手がどうにも好きになれない。
ブサイクだと「こんなブサイクな人と結婚するなんて気が狂ったの?」と言いたくなる。
服がダサかったりすると「もっと趣味のいい人はいなかったわけ?!」とイライラする。
逆に顔が良かったりすれば「どうしてそんな美人(イケメン)と結婚できるわけ?!」と怒りが湧き起こる。
ましてや立派な人だったら、「なんてイケすかないんだろう?!」と腹が立つ。
自分の焦りや劣等感、さらにきょうだいの関係性が新たな局面に進むことへの戸惑いが、その背後にあるんだと思います。
とにかく、どんな人であっても気に入らないことはあるんです。
イケすかないやつはイケすかないんです。
『ファミリー・アフェア』では、妹の連れてきた婚約者に対して兄はとにかく嫌悪感を示します。
僕は妹の婚約者がそもそもの最初からあまり好きになれなかった。
世の中に一目で嫌になるというタイプの顔があるとすれば、それがその顔だった。
彼はそれまで僕がみたこともないような奇妙な柄のセーターを着て、その下に色の合わないシャツを着ていた。一体なんだってもう少しまともな気のきいた男を見つけてこなかったんだ?
と言いたい放題。
すべてが気に入らない。
そんなことってあるんです。きっとそういうものなんですね。
だから、素直に祝福できなくても、なんか気に入らないと思ってしまっても、自分を責める必要なんて全くないんです。
それは、あなたがきょうだいのことを、とても大事に思っている証だから。
でも態度に出すのはちょっと危険
でも、あからさまに嫌な態度をとるときょうだいにも伝わってしまいます。
そうなると、嫌味を言われること間違いなし。
どれだけ仲の良いきょうだいだって、自分の好きな人に対してそんな態度を取られたら、嫌味の一つだって言いたくなるでしょう。
悲しいからです。辛いからです。
好きな人に好きな人の悪口言われたり、認めてもらえなかったりするのが1番辛いんです。
友達に自分の推しをけなされたら悲しいですよね。同じくらいきゃっきゃして好きになって欲しいですよね。
私だって推しの写真を見せたときに、「う〜ん、あんまり好みじゃないかも」と言われたらイラッとします。
そういうことです。
『ファミリー・アフェア』では、妹は自分の婚約者に対して嫌悪感を示してくる兄を猛烈批判します。
あなたは物の見方が狭すぎるのよ
あなたは物事の欠点ばかり見つけて批判して、良いところを見ようとしないのよ。
本作品の兄は、遊び放題の広告チャラリーマン。
少し前までは、兄の自由で都会的な生き方を一緒になって楽しんでいたし、ある意味では憧れさえしていた妹ですが、地に足のついた素敵な婚約者ができてからは、兄の対して真っ向に批判的になります。
「本当の大人の生活」つまり現実というものに向き合い始めるのです。
やっぱり女の子の方が現実を見るのは早い気がします。
だって、子供欲しいとなると逆算しないといけないもんね。20代ってほんと短すぎないですか?
20代、20年ください…
この作品の兄は27歳。男の人の27なんて華の年齢じゃないでしょうか。
27歳で広告の仕事してて、まぁまぁ稼いでるとなったら、遊び放題だろうし、1年ごとに寝る女の子を取り替えたってしょうがない(?)かもしれません。
話がそれました。
つまり、イケスカねぇ〜!と思っても、それが伝わらないようにした方が穏便だよということです。
あんな男が一族に1人くらいいてもいいかも
この悩みの解決方法は、時間しかないでしょう。
最初はなかなか受け入れられなくても、その相手と何度か会ううちに、まぁ悪い人じゃないかな、と思う日が来ます。きっと。
思えなかったら、悪い人です。距離を置きましょう。
「あ、今日の服は割とまともかも?」
「あ、よくみたら耳の形だけは好きになれるかも?」
『ファミリー・アフェア』でも結局、何度か顔を合わせるうちに、兄は「まぁ悪いやつじゃないしな」と心境が変わってくるし、妹も、「ちょっと当たりすぎた」と反省するんです。
「でも一族に1人くらいはああいうのがいても悪くないだろう。」
「私もそう思うの。私はあなたという人間が好きだけど、世の中の人がみんなあなたみたいだったら、世界は酷いことになっちゃうんじゃないかしら?」
「だろうね」
そもそも結婚ってなんだ
まぁそもそも、こんなに心をざわつかせる結婚ってなんなんだよ、という話です。
「結婚は人生の墓場」と言われることもあるけれど、それはどうだろう?
令和のこの時代、結婚って、そんなに大したことじゃないのか?
友人たちは、結婚を「同じ墓に入る取り決め」とか、「死んだ時に連絡が入り、喪主ができるポジションの獲得」とか言っていました。
みんな、死んだ時のこと考えすぎじゃない?
そんなことを考えるのは、20代半ばの感覚らしい。
結婚には新しい家族や親戚との関係、子供を作るかどうかなど、現実的な面があります。
結婚は、現実を直視するイベントなのかもしれません。
もうネバーランドで遊んではいられない。帰るべき時がきたんだよ、ウェンディ。
『ファミリー・アフェア』では、妹は食べて飲んで女と寝てという生活を繰り返す兄に批判的ではなく、むしろ憧れていました。
でも、婚約者と出会ってからは、「ほんとはもうちょっと遊んでいたい」という気持ちもありつつ覚悟をきめ、兄がまだまだ平気で遊んでいることに苛立つようになります。
正直まだまだ遊んでいた〜い!!という気持ちもちょっとある
でもそうじゃなくて結婚を選んだ。
そんな自分の選択を肯定するために、兄を批判している節も多いにあるはず。
自分の選択が間違ってないって肯定したいもんね。めちゃくちゃわかります。
結婚は大事な決断で、難しい決断なんだ。
最近、友人がどんどん結婚していく年齢になりました。
みんなすごいや。
今日の処本箋

症状|きょうだいが結婚するときいてモヤモヤする
- きょうだいが結婚するときいて、素直に喜べずモヤモヤする
- きょうだいの結婚相手が気に入らない
おくすり|『ファミリー・アフェア』村上春樹
『ファミリー・アフェア』は、1986年に発売された村上春樹著『パン屋再襲撃』に収録されている短編小説です。
親元を離れて、東京で二人暮らしをしている兄妹の関係を描いた、タイトルの通り「家庭内の問題」の話です。
ガールフレンドたちと都会的な交際をエンジョイする兄に対して、都内の裕福な家に育ちIBMだかのコンピューター技師をしている”立派”な婚約者ができた妹は、兄に対して批判的になっていく。
「あなたって物の見方が狭いのよ。」
そして、そんな”立派”な婚約者がどうも気に入らない兄。
「みたこともないような奇妙な柄のセーターを着ている男」
仲の良かった兄と妹。そんな二人の関係性が「妹の結婚」という”アフェア”(問題)によって微妙に変化し、そして和解するのかしないのか。そんな機微を描いています。
効き目|笑える、スッキリする
この作品は、主人公が偏狭で冗談好きの変わり者のため、出てくるセリフがとにかく面白いんです。
そしてこんなに悪口がよう出てくるわというくらい、スラスラスラスラしゃべります。
兄妹の掛け合いも、対立しているのに息がぴったり合っており、見どころ。
この作品を読めば、クスッと笑えて、ちょっぴりスッキリできますよ。
まとめ|どうぞ、お大事に。
きょうだいの結婚に対して、モヤモヤしてしまうことは当たり前のことです。
仲が良かったりしたら尚更。
そんな感情を大事にしつつも、時間が解決してくれるのを待つのが1番だと思います。
結局のところ、家族であることには変わりない。
きょうだいが社会人になった時に学生の頃とはちょっと関係性が変わったように、また新たな関係のステージに進んだだけなのです。
戸惑って当たり前、受け入れられなくて当たり前です。
自分を責めないでくださいね。
今回のお悩みに対する処本箋は、村上春樹の『ファミリー・アフェア』。
妹が結婚することになった兄妹の心の機微や関係性の変化を描いたこの作品は、あなたの心にそっと寄り添ってくれるでしょう。
処本箋
処本箋(しょほんせん)は、あなたの悩みや気分に応じて、本を処方するサイトです。
ビブリオセラピーというものがあるくらい、本はあなたを癒すパワーを持っています。
様々な悩みや気分に応じて本を処方しているので、ぜひ他にも見てみてくださいね!
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