鍋が恋しい季節になってきました!
突然ですが、イノシシ肉を入れたお鍋をなんと呼ぶか知っていますか?
正解は、「牡丹(ボタン)鍋」です。
なぜボタンって呼ぶんだろう?うーん、花札で猪と牡丹がセットだったからとか?(任天堂って花札から始まったらしいですよ)
と調べてみたら、牡丹に蝶、萩に猪だったので、違いました…。
ではなんで?と気になったので、今回はボタン鍋の由来と、ついでに他に変わった呼び方の鍋をご紹介します。
ボタン鍋はなぜボタン鍋?

イノシシ鍋であるボタン鍋。
その由来は諸説あるそうですが、中でも個人的に有力なんじゃないかと思った説を紹介します。
説①くすり喰いとして隠語だったから

話は縄文時代に遡ります。
縄文時代、貴重なタンパク源は狩猟でとった鹿と猪でした。
縄文以降は、牛、馬、鶏が家畜として導入され、それらも食べるようになります。
しかし、憲法一七条の「不殺生」の影響で、675年に天武天皇が「肉食禁止令」発布します。
このことによって、牛、馬、猿、犬、鶏を食べることが禁止となりました。(猪と鹿はセーフ)
(馬や猿や犬を食べてたんですね・・・)
他が禁止されたことによって、猪と鹿の価値が上がり(貴族の間でジビエブーム)、人気の食材となりました。
しかし江戸時代、五代将軍、綱吉が「生類憐れみの令」を出し、殺生を禁止します。
庶民は気にせず食べ続けたようですが、武家や公家は肉を薬だと言い張り、建前上は宗教を守っているように見せたようです。
薬だと言い張った理由としては、当時日本に入ってきたオランダ医学から、「日本人は肉を食べてないから虚弱なんだ」という認識が広まったことによるそう。
簡単にまとめると、禁止なっちゃったけど猪と鹿大好きだから食べたい!さてどうやってこっそり食べようか…。そういえば肉食べないと強くなれないって流行りの蘭学で言ったし、薬として食べることにすれば良いのでは?とこじつけたのです。
これを、くすり喰いと呼びました。
つまり、猪(や鹿)を猪とのそのまま呼ばないでわざわざ「牡丹(ぼたん)」と呼ぶのは、薬として売られるようになり、隠語となったからという説です。
昔から、美味しいものは禁止されても食べたい!という食い意地は人間のサガなんですね笑
しかし、これでは隠語になった経緯はわかりましたが、なぜ「牡丹」なのかがわかりませんね。
説②牡丹の花の色と盛り付け
こちらは、猪肉の色が豚肉より赤く、ぼたんの花の色に似ていること。
また、猪の肉を薄く切って、牡丹の花に似せて盛り付けるからという説です。
なるほど、赤いお肉を綺麗にまあるく盛り付けたんですね。
確かに牡丹の花に似ているかもしれません。
とても洒落た由来ですよね。
昔の人は、いろんな場所でお花の名前を使うことが多い気がして、今よりずっと自然が身近だったんだなと思います。
ちなみに牡丹の花はこんな花。

花というより華という字が似合うような、ゴージャスでボリューミーなお花です。
花言葉も「王者の風格」。
昔読んだ小説に牡丹という名前の女の子が出てきて、控えめで古風なイメージを持ちましたが、牡丹は結構派手なお花ですね。
説③唐獅子牡丹図

唐獅子牡丹図は、百獣の王である「獅子」と百花の王で富貴の象徴とされる「牡丹」を組み合わせた絵。
こちらの獅子(しし)が猪(いのしし)とかけられ、猪と牡丹がセットになった説です。
以上、ボタン鍋の牡丹の由来は諸説ありますが、以下の3つの説をご紹介しました。
- くすり喰いから隠語になった
- 肉の色や盛り付けがボタンに似ているから
- 唐獅子牡丹図から
どの説も歴史を感じさせられて感慨深いですね。
変わった名前の鍋
さてボタン鍋の由来がわかったところで、他に変わった呼び方の鍋をご紹介します。
桜鍋
桜鍋は、馬肉が入った甘めの味噌ですき焼きふうにしたお鍋。
馬肉のことを「桜」と呼ぶため、桜鍋と呼ばれます。
馬肉を桜と呼ぶ理由は、こちらも諸説ありますが、桜のように肉がピンク色だからが個人的に有力だと思いました。

紅葉鍋
紅葉(もみじ)鍋は、野生の鹿肉を使った鍋料理。
ねぎや豆腐などとしょうゆ味ですき焼き風仕立てです。
鹿肉のことを紅葉と呼ぶためこのように呼びます。
この理由は百人一首と花札の2つの説が有力です。
ちなみに、ヨーロッパでは鹿肉は高級食材。
牛肉よりも高タンパク、低脂肪で、鉄分が多いのが特徴です。北海道、長野県、兵庫県などが産地です。
説①百人一首(古今和歌集)
奥山に 紅葉踏みわけ鳴く鹿の
猿丸太夫(5番) 『古今集』秋上・215
声きく時ぞ 秋は悲しき
百人一首の1番目の歌なので、耳にしたことがある方も多いと思います。
説②花札

10月の花札の絵柄は紅葉で、紅葉と一緒に描かれている動物が鹿です。
この鹿がそっぽを向いているから、10月の鹿で「シカト」に言われるようになったことは有名ですね。
てっちり

てっちりは、大阪発祥のフグのお鍋です。
ボタン鍋や桜鍋、紅葉鍋と違って、もう鍋という言葉すらつかないので、知らないと何か想像するのも難しいのではないかと思います。
てっちりの由来は、昔フグを鉄砲(てっぽう)と呼んでいたことからきています。
フグは毒があることで有名ですよね。
日本では縄文時代からフグを食べる習慣があったようですが、フグの毒にあたって死んでしまう人も少なくなかったよう。
食べるとあたり、あたれば死ぬこともあるということからフグのことを「鉄砲」と呼ぶようになったそうです。
フグと書いて鉄砲と解きます。その心は?
どちらも当たると死ぬでしょう〜。ということですね(ちょっと物騒ですね笑)
そのため、フグのお鍋は鉄砲鍋(てっぽうなべ)とも呼ぶそうです。
さぁ、少しずつてっちりに近づいてきました。
では、「ちり」ってなんなん?ということですが、
「ちり」とは、白身の魚を使った鍋のことを言います。
魚の切り身を熱い鍋の中に入れると、身がちりちりと縮んでいく様子から「ちり鍋」と名付けられたと言われています。
この「鉄砲」と「ちり鍋」の二つが合わさり「鉄のちり鍋」となり、「てっちり」へと変わっていったようです。
いやいや、フグ鍋でええやん!なんでわざわざわかりにくい呼び方を?というところは、ボタン鍋等と同じく隠語だと言われています。
死人が出過ぎて、江戸時代フグ禁止令が出ましたが、それでも食べたい!という食い意地?でてっちりと呼んでこっそり食べていたそうです。
やっぱり、美味しい食べ物はいくら禁止されても諦め切れないですよね。
私は関東出身なのでなかなかフグを食べる機会はないのですが、関西に行くとフグ料理の看板をよく見ます。
今度行ってみようと思います。
まる鍋
まる鍋は、すっぽんの鍋のことです。
スッポンは甲羅がまんまるであることから、「まる鍋」と呼ばれるようになったそう。

ハリハリ鍋
ハリハリ鍋は、くじら肉と水菜を煮込んだ鍋料理です。
大阪発祥で関西では古くから家庭料理として親しまれていたとのこと。
くじら?と現代っ子の私は驚きましたが、昔はクジラ肉が安く、手頃だったそうです。
そのため、くじら肉と水菜のみで作れる『ハリハリ鍋』は家系の味方だったんですね!
また、水菜も古くから関西でたくさん栽培されていたとのこと。
「ハリハリ」の由来は、水菜のしゃきしゃきした食感からきた表現とのこと。
しゃきしゃきならわかりますが、ハリハリのオノマトペはなかなか斬新だなと思いました。
水菜、はりはり?
くじら鍋で良いような気がしますが、水菜がメインなのですか
一般的な鍋料理とは違い、水菜と鯨肉(もしくは鯨肉以外の代用の肉)以外は何も入れない簡素な料理です。
まとめ
調べていくと、地方の郷土料理は奥が深いです。
ちょっと離れただけで全然違う文化があって、全然違うものが食べられています。
昔インドネシアに行った時に、数キロ走ると、文化も言葉も全く違うから、通じないんだよ〜と現地の人が言っていてかなり驚きましたが、日本も割とそうなんじゃないかと思います。
全国どこでも同じものが同じクオリティで食べられるようになって便利になった一方で、その土地でしか食べられないものをもっと食べてみたいなと思いました。
ちなみに、農林水産省の「うちの郷土料理」というページが、郷土料理がまとまっていて面白かったので、興味がある人は見てみてね。
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